2005年01月21日

インフルエンワクチンは効果があるのか

クニミツの政に関するネタ。
作品中ではインフルエンザはほとんど効果が無いと言っているがどうなのかについてググってみた。


*以下は私が感じた結論です。なるべくソースを明示しますので、違和感を感じたら自分で調べてください。


とりあえず、論点から。
インフルエンザワクチンについて論じられる時はどうやら三つの視点から論じられるみたい。
1,インフルエンザワクチンは社会全体のインフルエンザの流行を抑えられるか
2,インフルエンザワクチンを打った人はインフルエンザの発症を抑えられるか
3,インフルエンザの副作用は上記1,2のメリットと比較してどれ程のものなのか

と言う三つです。


情報が膨大過ぎてわからんのですが、ぐぐった結論としては
1→わからないが、流行を抑えられとしても僅かと言った感。
2→発症を抑える効果は劇的で無いにしろある。感染したとしても重症化しづらい。
3→因果関係の立証が難しいため良く分からない。

と言った印象を受けました。


で、最もポピュラーな誤解は、以下の事ではないか。
インフルエンの予防接種は、1994年に義務化でなくなった→ワクチンはインフルエンザに効かない
しかし、真相はこうだ。
インフルエンザの集団予防接種は集団感染予防と言う観点から意味が無い→経済的な負担や副作用のリスクを考え、自己責任の許に各々が接種すべきである
と言う事なのである。
以下、topic毎に分けて検証


インフルエンザの予防接種の義務化はどのような意図で行われていたか
インフルエンザの集団予防接種が行われたのは1962年より、1976年から義務化。感染症の予防は、発症しても広がる前に抑え込む事が重要。そのため、閉鎖で濃密な空間+抵抗力が弱い+家族を介しての感染経路の多様さと言う観点から、学童の予防接種が一番criticalに予防効果を挙げられるだろうとの狙いがあった。この様な学童への予防接種を義務化した国は日本のみであり、かなり、強引な政策の様に見える。推測だが、当時の医学の進歩により、それまで恐れられていた様々な感染症が撲滅、あるいは予防され、「次はインフルエンザを撲滅すべきだ」と言った空気があったのではないか。現在、エボラやSARSと言った新興感染症に対する医学の無力さが強調されているのとは対照的。


実際そのような予防接種は効果をあげられたのか
他の多くの公衆衛生事業がそうである様に、検証は難しい。国内における大規模な疫学調査として前橋レポートがあり、前橋レポート上では、社会的流行を防ぐ効果は無いと指摘されている。しかし、「何を持って流行を防げた、あるいは防げなかったと判断するのか」と言った点から以後、擁護論と反対論がぶつかる事になる。

「何を持って流行を防げた、あるいは防げなかったと判断するのか」が難しい理由の例
 ・インフルエンザの型は毎年流行が違うので発症様式も違う
 ・ワクチンの型が当たった場合には確かに効果が出ているが、そうで無い場合はどうか
 ・社会集団によって、流行の経路は違う事をどう検証するか
 ・感染しながらも症状が出ない不顕性感染はどう捕らえるか
 ・インフルエンザ以外の原因によって生じる感冒様症状の患者をデータからどう排除するか
等などである。

前橋レポート
前橋レポートに対する反論の論文
それに対する反論


インフルエンザワクチンの集団予防接種が義務化で無くなった経緯はどのような物であったのか?
前述の前橋レポートが出され、集団感染予防に対するワクチンの効果が疑問視されたこと。
重篤な副作用が出現した事。
1994年にワクチン被害裁判で国が敗訴し事。
これらの事がマスコミによって増幅されたため。
副作用の死によるインパクトは、予防接種を怠った事により、インフルエンザに感染して死ぬ事によるインパクトよりも大きい。

・経緯
「インフルエンザワクチン効果にエビデンスはあるか?」の1
国立感染症研究所「インフルエンザワクチンについて」の5
・ワクチンによる副作用の報告例
予防接種健康被害認定状況 ワクチン別 接種年次別 平成14年12月31日現在 厚生労働省


インフルエンザワクチンは個人の感染防止と言う観点からはどの程度の効果があるのか
これは文献によって幅があるがおおよそ非接種群に対して重症化を防ぐのがは70%前後(ワクチンを打つ事によってインフルエンザで重症化する人が3割になる)だと述べられている。ただし、発症予防のポイントを「抗体価上昇」と言う観点で見ている文献が多く、実際の感染防止に対してはズレがあると予想される。また、年齢やインフルエンザに対するリスクがあるか無いかと言った点によっても値は変わってくる。

日本医師会の見解


インフルエンザワクチンが効果があるのに、集団感染を防げないのはどうしてか
ウイルスに対する免疫応答の段階の問題。インフルエンザウイルスは血中に移行する前に気道粘膜上で増殖する。ワクチンの効果が発揮されるのは血中にウイルスが移行してから。そのため、ワクチンを打っても、インフルエンザウイルスの保菌者にはなりえてしまうし、初期症状は出る。この保菌者達がウイルスをばら撒く事になる。なので、集団感染と言う観点から見たときワクチンの及ぼす力は弱い。
インフルエンザワクチンに対して否定的な前橋レポートも、ワクチンの効果については別に考慮すべきとしている。

「インフルエンザワクチン集団接種に関するわれわれの見解」の序文


インフルエンザの副作用としてどのようなモノが報告されているのか?
今日の診療VOL13によると、
【副反応】 〈重大〉 1)ショック,アナフィラキシー様症状 2)急性散在性脳脊随炎(ADEM)(接種後数日〜2週間以内:発熱,頭痛,痙攣,運動障害,意識障害等)→MRI等で診断,適切な処置 3)ギラン・バレー症候群(四肢遠位から始まる弛緩性麻痺,腱反射の原弱消失等)→処置 4)痙攣(熱性痙攣を含む)→処置 〈その他〉 1)過敏症(発疹,蕁麻疹,紅斑,そう痒等) 2)接種部位(局所の発赤,腫脹,疼痛等) 3)全身反応(発熱,悪寒,頭痛,倦怠感,嘔吐等)→いずれも2〜3日中に消失
今日の診療Vol.13 (C)2003 IGAKU-SHOIN Tokyo

まとめると以下の3つ。

1,アレルギー反応が出て、腫れたり蕁麻疹が出る、ショックを起こしたりする。
2,脳や神経系に影響を及ぼして脳症や脳炎を起こす。
3,その他

基本的にワクチンは病原体としての活動性は無くなった成分をいれているので、これらの副作用は人間側の免疫応答が過剰になることによって引き起こされる。自己免疫反応の過剰が起こる体内要素毎、それが働きかける体の器官毎によって症状が異なると解釈出切る。間違っても「インフルエンザワクチンによってインフルエンザが発症する」と言った事はありえない。


そういった副作用はどれ位の頻度で起こるのか
因果関係の立証の難しさから分かりにくい。

因果関係の立証が難しい理由の例
 ・個人差がある
 ・他の疾患と複合的に作用した時に、ワクチンの影響のみを分離して考察するのは不可能
 ・副反応を確定させるだけの特徴的な血液所見が無い


また、ワクチン擁護派と反対派で恣意的な引用が一番強く行われる所である。一応厚生省の薬事法に基づく副作用の報告(平成15年)では以下の通り
平成15年度のインフルエンザワクチンの推定出荷本数は,約1,463万本であった。また,医薬品との因果関係が不明なものを含め製造業者等又は医薬関係者から報告された薬事法第77条の4の2に基づく副作用等報告による副反応は,162症例,259件(編者註:症例と件数の違いは二回摂取を行う者がいるためか?)であった。
 副作用等報告として数多く報告された副反応は,注射部位の発赤・腫脹等26件,発熱18件,ショック・アナフィラキシー様症状14件,肝機能障害12件,発疹等12件,意識消失等9件,関節痛7件,筋痛7件,ギラン・バレー症候群7件,痙攣7件,喘息6件,下痢5件,ADEM4件,血小板減少3件,急性腎不全・ネフローゼ2件であった。

死亡、後遺症につながる様な副作用に関しては、ワクチンとの因果関係は一件も証明出来ないとされている。しかし、これは前述の様に因果関係の立証が難しい事もあるし、また、報告されていない副作用がどれ位あるかについても未知数。国立感染症研究所では、「軽度の副反応、すなわち局所反応が10%程度、発熱など全身反応が1%以下である。死亡あるいは生涯にわたりハンデイキャップとなる副反応の発生は、予防接種被害認定などの調査に基づいた調査では100万接種あたり1件」と述べている。また、厚生省は副作用による死亡について「ワクチン接種との関連が完全に否定できないもの」として、約2,500万接種あたり1件と述べている。
副作用に関する資料は都合の良い様に引用、解釈されてがちなので、ソースをたどる事が重要。例えば、ワクチントークと言うページで、副作用の例としてインフルエンザワクチンの2000年度、2001年度の副作用と言うデータが引用されているが、「症状」の欄に「肺炎」と書かれている項目がある。言葉のあやなのかもしれないが、もちろんワクチンの副作用で直接的に肺炎を起こしうる事はあり得ない。

厚生省のインフルエンザQ&A、インフルエンザの副作用について
医薬品・医療用具等安全性情報205号(薬事法に基づくデータ)
厚生労働省関係審議会議事録等 その他(検討会、研究会等)の予防接種後副反応・健康状況調査検討会(報告義務等が曖昧な物)


結論としてどういうことか
インフルエンザワクチンは個人の単位では明らかに効果がある、重症化しにくい。
しかし、集団感染が防げるかについてはインフルエンザの感染の特異性とワクチンの非力さから難しい。よって、個人が自己防衛、自己責任の元ワクチンを受けると言う形が望ましい。事実、そういった考えの下、ワクチン予防接種の義務化は無くなった。しかし、自己責任と言われても、一般に副作用のリスクについては素人が判断する事は難しく、マスコミによる誇張が混じったり、薬剤会社との利害関係からミスリードされた結果が発表される可能性があったりと難しい。
また、老人等の免疫力の弱い群に対しては摂取が推奨される。これに関しては論文も多いし、海外でも推奨されている。ただ、副作用に関してはやや不透明。




(追記:とりあえず完成だと思う。文章が長くなってしまったため、間違っている箇所も多々あると思います。気になった点等ありましたら、コメントで指摘、または「nms_218@hotmail.co」のメールアドレスの最後にmを付けて送ってください。
長文お付き合い頂きありがとうございます 1/23 21:09)
(追記2:現役のお医者さんが前橋レポートについてコメントしたモノがあったのでリンクを貼らせていただきます。同じ様な主張の箇所があってホッっとしました)
論文
目的
posted by netti at 18:06| Comment(5) | TrackBack(0) | TEXT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。TBありがとうございます。
ここまで詳細にこの件に関して書き込んでいただいていればうちがわざわざ書くこともないですねw。今後ともよろしくお願い申し上げます。
Posted by ひろふみ at 2005年01月26日 17:22
沢山間違いもあるだろうし、読みにくい所もあるのですが、幸いにして(読みにくいせいか?w)「そこは間違っている」と言った突っ込みもほとんど無くて、ほっとしています。

知識や経験は無いが、前橋レポートを最初から最後まで読むと言ったヒマな事が出来る学生と、ヒマは無いが知識や経験が豊富な現役の医者が同じテーマについて意見を言っていると言うのは何とも素晴らしいなと思ってますが。大袈裟ですかね。

今回はわざわざコメントを戴き、ありがとうございました。
Posted by netti at 2005年01月27日 01:15
とても読み応えがありました。更新停止中とのことですが、お暇があればぜひ鳥フルの話題も採り上げてください。
Posted by 名無し at 2005年11月16日 00:03
たいへん興味深く読ませていただきました。
いろんな文献にリンクをはってあり、一方に偏らない情報を参照できるのはありがたいですね。
ワクチンの有用性に懐疑的な話を聞いて、ネットで情報検索をしていたのですが、このサイトの情報で十分だと思いました。
Posted by 通りすがり at 2009年11月19日 23:27
インフルエンザの予防接種について検索してたどり着きました。
分かりやすく情報がまとめてあって大変参考になりました。

こちらのサイトで書かれていることと、もうひとつ気になっているのは、長期的な効果です。
たんにgoogleで検索しただけの情報なので信頼性はびみょうですが、仮に「今年のインフルエンザ」の発生や重症度を予防接種で抑制できても、そのせいで「長期的な抗体」を獲得できないため、10年20年といったスパンでみれば差が無いという話があるといふ…
(予防接種で獲得できた抗体は1年たたず失われる上に、予防接種した型以外のウイルスやちょっとでも変異したものには効果が無い。実際にインフルエンザにかかって得た抗体は何十年もたもたれ、効果範囲も広いとかいう話)
Posted by KEI at 2010年12月06日 22:58
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